picturesque music 音のみせる情景vol.1近藤智洋インタビュー

近藤智洋 見出し
 さまざまなミュージシャンと全国津々浦々をめぐる────
 1994年、スリーピースバンド「PEALOUT」を結成。フジロックフェスティバルに何度も出演するなど、ロックバンドとして大きな活躍をし、2005年に解散。その後ソロ名義で活動しながら、2007年深沼元昭(PLAGUES、mellowhead)らと4ピースバンドGHEEEを結成。ソロ、バンド合わせて年間100以上の公演をこなしている。
 社会人としての経験も持ち、ミュージシャンとしてさまざまなステージで経験を積んでいるアーティストであるからこそたどりついた今の姿勢。フランクな語り口からも見える固い意志と、真摯さにはファンならずとも心にひびくものがある。

 

──去年のライヴ数は117回、2008年には170回を記録しています。ほとんどソロでしょうか

近藤 圧倒的にソロが多いね。バンドはGHEEEで20本くらい。あと去年はソロのバンドを始めた(近藤智洋&ザ・バンディッツ・リベレーション)んで、それを月1で。

■歌が歌いたい、楽しく 近藤智洋写真

──バンドの曲も弾き語りで1人で歌われたりしますよね。演奏する楽器と曲を作った楽器は対応していますか?

近藤 基本的にアコギで作った曲とピアノで作った曲があって。(作った楽器で)それぞれのをやるんだけど、それだけでは面白くないんで、ラフに色々やってる。
 楽器によってのこだわりというのはあんまりないかな。自由にやったほうが楽しいから、面白ければ。まず自分が楽しいことが一番だから、ずっとアコギでやってた曲をピアノでやったら、あ、結構いけるじゃんと思って楽しくなったりして。

──PEALOUTでは今もよく演奏されているギター、ピアノに加えてベースも弾かれてましたよね

近藤 PEALOUTでは、雑誌とかのメンバー募集で集めたんだけどその3人ですごい仲良くなっちゃって。ベース入れて4人でやるのも合う人探すの大変かなあと思って。ギターボーカルがよかったけど、ギターはもう居たんでベースを(自分が弾きました)。あんまり楽器に対するこだわりないです。もう歌がやれればそれでいいです。

──じゃあ打ち込みでカラオケ...

近藤 それはバンドじゃないから。
 カラオケボックスに籠って歌うのも、全く興味ない。よく、ボーカリストの人で1人でも鼻歌とか歌う人がいるじゃない。歌好きなんだなって思う。俺まったくそういうことしないから。1人でカラオケいってうわーとかまったくならないから。人前で発信するのが好き。

──ご自身のバンドやGHEEEで曲を書かれていますが、バンドの音を考えるときは打ち込みで作り込んだりしないんですか

近藤智洋写真2

近藤 アレンジはだいたい曲作ったときにイメージがある。リズムだったり、聞こえる音とかがある。昔は打ち込んだり、かなり細かくデモを作り込んでバンドに持って行ったりしてたたんだけど、なんかめんどくさくなって。今はアコギで録って、でバンドでせーので合わせて作る。みんなに任せちゃうかな。みんなどんな感じにするか、だいたい想像できるから。
 GHEEEでもそうだよ。深沼くんはかなり作り込んでくるけどね。もう、それで出していいんじゃない?くらいの(笑)それが面白いと思うんだよね。2つのやり方というのが。

 

──そもそも音楽活動を、バンドをはじめようと思ったきっかけは何でしょう?

近藤 小さいときはピアノやってて、中学校からロックとかビートルズとか聞いて、音楽は好きだった。ミュージシャンになりたいっていうのはあった。大学時代は趣味でバンドやってたけど、あーやっぱ音楽で食ってくのは無理だなと思った。でも音楽に関わりたいなと思って、東芝EMIに就職して、5年くらい音楽制作とかしてました。28歳のときにやっぱり30歳までにやりたいこと──バンドをやろうと会社をやめて、それでメンバー探して見つけてできたのがPEALOUT。

■「歌詞を書くのは好きじゃない」──日本語詞という挑戦

──PEALOUT、GHEEEではほとんど英語詞、ソロでは日本語が多いですね。歌詞を書くのは好きなんですか?(GHEEEのステージでは歌詞の書けない近藤さん、がときどきゆるく責められている)

近藤 歌詞を書くのはいちばん好きじゃないね。一番大変だ。めんどくさい。曲を書くのは好きだから、いくらでも出てくるんだけど。詞は特に日本語だと難しい。ソロのやつとか(大部分が日本語なので)大変かなあ。英語だとメロディが作りやすい。日本語だとメロディに合わせるのが難しい。
 俺の場合英語で歌詞を書く場合はなるべくシンプルにしたいっていうか、中学生が読んでも分かる英語で書こうとPEALOUTのときから思ってて。あまり難しい文法を使わずに。それは結構考えてるかな。

──聞き手は日本語を使われている方が多いと思います。書かれる曲には英語詞と日本語詞がありますが、違いは何でしょうか?

GHEEE

近藤智洋が活動するロックバンド「GHEEE」(ギー)

近藤 英語の場合はいろんなふうにとってもらってかまわない、そういう表現の仕方することが多い。今までは日本語詞でも英語と同じように聞く人がいろんな景色を見てくれればいいなあと思ってたけど、最近はなんかこう、もっと分かりやすくしたいなあと思って。聞いた人が同じ景色が浮かぶ歌詞をかいてみたいなあと思うようになったかな。セカンド(2007年のソロアルバム)出してからそう思って、最近の新曲はそう思って書いてます。

──何かあったんですか?

近藤 うんちょっとね、自分で日本語の歌詞が弱点だなあと思うことがあって、もっとよくしたらもっとよくなるなあと思って。あんまり抽象的な表現をやめてみようかなあと思って。それで一回トライしてみようと。次、今年かなあ、新しいアルバム作ろうとしてて、それは多分今までの歌詞とはがらっと変わる。

──景色が浮かぶ、分かりやすいというと、映画や詩歌など先人が極めたさまざまな表現技法の分野がありますよね。意識しているようなジャンルはありますか?

近藤 曲によってちがうんだけど、物語みたいな。映画のシーンが浮かぶみたいなものだったり。あともう1つ、童謡みたいなもの。この2つは意識してるかなあ。
 ソロの俺の歌って難しくて、一回聴いただけじゃわからない、何回も聴くうちによいと思えるようになってきたっていう人多かったんだけど、最近、ライヴで初めて聴いた人でも「今日のあの歌詞の曲教えて欲しいんです」って言ってくれるようになってきた。ちょっとづつだけどね、変わってきたかな。

──ちなみに他の人にかいてもらうという選択肢は考えられますか?

近藤 GHEEEの場合は深沼くんが書い(た曲を歌っ)てるけど。日本語だと結構厳しいかな。難しいかな。(編注:GHEEEの曲は英語詞のみ)

──それは自分の持っているイメージを共有するのが難しいという理由からでしょうか?

近藤 俺が思っているイメージをもとに書いてもらえればいいけど、そういうことはないから。逆にいうとカバーとかならね。もともとすごく好きな歌詞の曲、こういう世界好きだからっていう日本語の曲のカバーならありです。まだ人に書いてもらったことはないからそう思うね。

■すべてを自分でこなすことで手に入れたもの

──そもそもなぜ、年間100以上ものライヴを行っているのでしょう。何か特別な理由があるのでしょうか?

 PEALOUTが2005年に終わって、ソロになったときにいろんなところをまわりたいって思った。バンドってさ、なかなかツアーに行けないのよ。経費の問題だったり。行っても東名阪、札幌、福岡。たまに東北行くとかね。なかなか細かくまわれなかった。ソロだったらとりあえずアコギもって行けばなんとかなるから。もうとりあえずもうがむしゃらに、とりあえず5年間は100本やろうと思ったの。去年(2010年)で5年だから一応目標達成。
 レーベルも自分でやってみようと思った。だから今全部ひとりでやってる。事務所も所属してないし。そうなったときに何か、何もしてない時間ていうのがもったいなくて、なにもしてない時間があるならライヴしようと。ライヴすることでいろいろなつながりできたり、プロモーションになるんじゃないかと考えて。それから行ったことないところに電話して、(ライヴ)やらしてください、って。
 色々覚えたよ、この年齢で。行ったことないところの地図を調べたり。でも最近はもうね、だいたい全部行ったことのあるところだから、だいたい地図を見ないでも行ける。あと電車の乗り継ぎとか、どこにホテルとったらいいかとか。

──それはどちらかというと遠征するファンのスキルですね(笑)

近藤 詳しいですよ(笑)
 ツアーも鈍行(列車)でぷらぷらいくと景色とかも面白いし。知らない駅で高校生とか乗ってきたり。だからこの5年は旅だったし、自分の人生にとってもすごく有意義だった。

──2日や3日に1回という頻度ですよね。そんなたくさんのライヴをこなす体調管理の秘訣はあるんですか?

近藤 こればっかりは親に感謝で、本当に風邪もひかないし。体調崩してライヴキャンセルしたこともないし。たまに二日酔いで体調悪いことあるけど、まあそれくらいかなあ。あとはもうほんとに風邪ひきそうになったら寝るとかさ。あとよく食べる。ちょっとでも体調悪くなったら、寝るとか薬飲んだり、風呂入ってあっためるとか。
 一番怖いのは二日酔いかな(笑)たまにあるからね、ツアー中に電車で横になったりとか。

──演奏してまわって、自分のペースで音源を作って。それを全国に待っていてくれる人がいる。理想の人生のように見えます

近藤 病気しなければね。
 毎年、5年間100本やろうとした理由はもう1個あって。毎年半年とか1年に1回戻って行ける店だったりライヴハウスだったりとかを作っていきたい。1年とか半年に1回、再会するみたいな。俺の目標っていうのは50歳とか60歳になっても、ギターもってそうやっていろんなところに行くことだから。だからこの5年間はそうやって拠点作りをやってきた。それは多分、ずっと続けていく、やっていけるために必要なことだと思う。

──最後に、今年の今後の予定を教えてください

近藤 自分にとっても今年は転機になると思ってて、毎月三軒茶屋のグレープフルーツムーンでワンマンライヴをやっていたんですがこの3月でいったん終わりにします。ライヴの数も今年は抑えめにするかな。企画ライヴみたいないろんな人とやるのを増やしていけたらいいなあと。
 GHEEEのアルバムは今年5月に出す予定で、ソロは今年中に出せたらいいなあと思っています。


 


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2011/4/22 PICTURESQUE MUSIC Vol.1


関連リンク
>>近藤智洋 オフィシャルサイト
>>GHEEE オフィシャルサイト


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