──OLDを脱退されたので、その理由を探るインタビューかな、と見せかけて基本的には新譜とミュージシャン神田直樹の音楽家としての今考えていることを探るインタビューです
神田 はい(笑)
■徹底的に自分を試すためのソロ活動──ま、でもまずはソロをはじめたきっかけのお話から。そもそも、なぜバンドを脱退してまで、ソロで動こうとしたのでしょう?
神田
OLDというのは、本来、全力投球してそのバンドとして見せていく存在なんだと思うんです。ソロ活動しているプレイヤーが集まっているようなスタイルのバンドではなくて、バンドとしての存在がOLDなんだと思うんです。
バンドの形としてみせていくべきOLDに居ながらソロでやろうとすると、やはりちょっと不自由な部分がでてきてしまう。時間的なこともあるし。
──なるほど、ドラムの先生やサポート仕事を通じて、OLD以外でのお仕事も多かったです
神田 あと、道内でライヴをしようとすると、札幌以外の場所では最大で100人規模になってしまう。たぶん、同じ労力でライヴの準備をしたら東京や大阪だったら、200人とか300人を集めることができると思う。
──OLDでは札幌である程度の位置づけがありますし、後輩バンドのことなんかを考えるとほいほいとどんなイベントにも出て行くっていう感じでもないですもんね
神田 そう。規模感やバンドのネームバリューとの見合いを考えてしまうと、やはりちょっと札幌でやれることというのは、ある程度の対バンやって、ワンマンやって、とだんだん固定化しちゃう。それを続けるのも簡単ではないし、悪いわけではないんだよね。でも、もう少し自由に自分自身の音楽の可能性を試したくなった。音楽で生きて行ったときに、自分の力でどこまでできるのかというのを徹底的に試してみたかった。
■本来なまけもの、自分を追い込まないと進められない──音楽を続ける、という意味では専業でバンドをやらなくても、何か他の仕事を続けながら音楽を続けていくという選択も今はポピュラーです。元々バンドマンはそういう方多いですし、一般的にも「二枚目の名刺」を持つ人は増えてきています。それは考えなかったんですか?
神田
本来なまけものだから、それはできないと思ったんだよね。
普通の職についたら、たぶん音楽やらなくなっちゃうとおもう。そっちの職ばっかりやっちゃうと思うんです。
だから自分で自分を無理矢理追い込んでいかないといけない。
音楽で食べて行こうと思った大きなきっかけは2つあって、1つめは2009年に事務所から独立したこと。自分たちでさまざまなことをやらなくてはいけなくなって。それはライヴのブッキングからレコーディングの手配からなんでも。もう1つは2013年から専門学校で教えはじめて、2009年からドラムの先生自体はやってたんだけど、その後カホンの教本を出版した。出版ってソロアーティストとしてはとても大きなことで、名刺がわりになる。いろんなお話もいただくようになって。自分の音楽活動を追求してみたいと思ったんです。
──目指すのは、ドラマー?パーカッショニスト?
神田
その場その場で、ベストな楽器をベストな形で演奏できるようになりたいんです。ドラムだとかパーカッションだとかそういうことではなく。
実際にはドラマーとパーカッショニストの間には、業界的には線引きがあることもあるんです。いわゆるスタジオミュージシャンみたいなシーンではね。僕はそういう人についていたこともあるから、そのあたりのラインも分かる。楽器としては打楽器全般やっていくけれど、そういう線引き的なところをきちんと心得ているから今の活動ができてるんだと思う。
──ピアノも始めた
神田
9年くらい前、27、8歳の時に、はじめてプロデューサーがついてレコーディングしたんだよね、そのときに、他のメンバーがコードとか音楽的な話をプロデューサーとしていたのに僕は全然分からなかった。これはやばいと思って、習い始めた。2年くらいはOLDのメンバーにも隠してね。
今回のアルバムでも最後の曲でピアノを弾いています。
──このアルバムは、各曲に神田さんの旧知のミュージシャンが共演する形となっています。一緒にやる人はどうやって決めたんですか?
神田
このアルバム、本当はもっと手弁当で作って、それこそ自分でCDRを焼いて200枚とかを手売りしようと思ってたんですよ。でもどうせ作るなら、やってみたい人に声をかけてみようと積極的に声をかけたら古村敏比古さんはじめすごいメンバーがそろってしまったんだよね。
そもそも人を巻き込んでいくのが好きで、ゲストをたくさん入れる形にしたんだけど、すごいことになってる。
──今回は札幌バンド”同期”ともいわれる川村健司さん(TRIPLANEのギタリスト)も入っていますね
神田 ケインくん(TRIPLANE川村健司)は7人中まんなかあたりの順番で声かけたんだけど、すごく反応が早かった。普通、メジャーの人って事務所と相談します、とかいって相談しているうちにモチベーションが落ちていってしまったりするじゃない。でも彼はまずやるやる!て。事務所は説得するからって。その動き方がすごいよね。
──元々の神田さんとの関係性があったからこそなのでしょうね
神田
それもあるけれど、やっぱり彼の仕事のやり方だと思う。今回一緒にやってくれた人はみんなそうだったけど。
自分のやりたいことをやれることを分かってる。
──曲づくりはどんな感じで
神田 コバケンくんとヨコタユウスケくんはもともとの彼らの曲に、僕がリズムをつけてやってます。SE-NOの蝦名摩守俊くんと伊藤幸治さんは曲を書き下ろしてもらったけど、どんな雰囲気か、とかは指定しないでお願いしました。
──すごい発注方法ですよね。普通なんらかのイメージなりを伝えるものでは(笑)
神田 そうかな?性格もお互い分かってるし、どういうのを書いてきそうかっていうのもだいたい見えてたから。
──関係性ですね。では例えば神田さんがドラムとメロディを書いている「いつだってこの世界は」はどう作ったんですか?
神田
僕がドラムとSaxの入るメロディを書いて、あとはケインくんに任せた。元気な、ポピュラリティのある音が欲しかったんだよね。彼はそれに完全に応えてくれた。最初に1フレーズだけ送られてきたんだけど、思った以上だった。それに、あ、TRIPLANEの音だって思ったよね。当たり前だけど。その要素が入ったことが嬉しかった。
やりとりはすごくやりやすかった。ケインくんはすごく勉強していて、ギターはもちろん、打ち込みなんかもできる。音楽そのもの以外でも異業種の人と積極的に交流してたり、いろんなことに興味を持って自分を広げようとしてるし、ちゃんと行動してる。やっぱりアーティストとして残って行くにはそういうのが重要だよね、って思った。
ま、音送っても「あ、うんうんやるやるでも明日からツアーだから作業できるの来週の水曜なんだけど」とかってなっちゃうから時間はかかったけどね。(笑)
──その曲は古村敏比古さんのSaxも入っていますね
神田 メインのメロディは僕が書いて、イントロ・間奏・アウトロは自由にしてくださいってお願いしたの。
──確かに、メロディと管楽器のアドリブっぽいところのミックスが面白いですね
神田
ケインくんのギターも、古村さんのSaxも、普段の彼らの活動とは違うから。ドラムは僕だし。それぞれの活動からは別のものに聞こえると思う。
今回特に普段の活動からは違うものになったな、っていうのはコバケンくんかな。普段はアコースティックな編成で活動しているから。僕のドラムが入ったことでバンドっぽい音になってる。そこに歌が乗っているのは普段の活動を知っている人にはすごく新鮮だと思う。あとは JARNZΩのToshiΩはボイスパーカッションだから普段は1人で前に出るっていうことはない。 JARNZΩはポップな音楽のグループだけど、今回はもっと技巧派的な部分が出ていると思う。
──今回の制作はご自分で?
神田
レコーディング自体は、それぞれの場所でそれぞれが録音して送ってもらってるのも多くて、向こうのエンジニアさんが居る場合もあって。(それをまとめて最終的なバランスを決める)マスタリングは札幌のエンジニアさんにお願いしました。
もうぎりぎりだった。もともとのリリースはもう少しあとを予定してたんだけど、11月2日のライヴ(神田さんのOLD卒業ライヴ、TRIPLANEも出演していた)にCDの納品を間に合わせるためににCDのプレスやさんにパッケージだけ先にお願いして、本当に締め切りの朝に音源を届けた(笑)
──このアルバムをどう楽しんでほしいですか?
神田 たぶんこのCDを手にとってくれる人は、参加しているアーティストのファンの人だったり、興味がある人だと思うから、さっきも話したように、普段とは違う音が出てるから、普段の音楽からのバリエーションを感じてもらえたら嬉しい。いつも聴いてる曲も、また違って聞こえるよね。
■札幌バンド、同期の絆──ところでTRIPLANEはじめ、同世代の札幌バンドはけっこう仲が良さそうに見えますが、札幌バンド同期会みたいな集まりってあるんですか?
神田
ないない(笑)
TRIPLANEと僕の間であるだけ。
バンドマンって打ち上げで呑むし、プライベートで会うことってあんまりないんだよね。
──先日の神田さんOLD卒業ライヴでもTRIPLANEの江畑さんがMCで「神田くんは呼び出すと必ずきてくれる」っておっしゃってましたね
神田 TRIPLANEがまめなんだよ。札幌に帰ってくるたびにみんなで呑もうって企画してくれる。彼らはそういう関係性をすごく大事にしてくれる。
■北海道でミュージシャンを続ける、北海道のミュージシャンを育てる──今後は?
神田
北海道をベースにして、それこそ道外とか海外からきたアーティストを迎え入れるような存在になっていきたい。
長くやってきて、もう、自分が前に前にいくことだけを考える年齢ではないと思うんだよね。
自分がミュージシャンとして最前線に居ようとするのは当たり前なんだけど、それだけじゃなくて若い層を育てたり、活躍できるようなシーンを作って行くことだったりも仕事なんだと思う。そうやって若い世代と一緒に仕事をして行く中で、自分も伸びて行くっていうのがよいと思ってる。
でも1人になると、ルールは全部自分になるじゃない?ぶれないようにするのがすごく難しい。いろんなスタイルの人がいると思うけど、僕は破天荒になってトラブルが見えちゃったらほんとに「あーこの人だめなんだ」って思われちゃうタイプだと思う。だから、目指すのはミッキーマウス。
──ミッキーマウス?
神田
彼はしゃべらないけど、どんなことをやっていてもやはりミッキーマウス。
自分も、普段の自分をある線できちんと保っていくことで、自然にどんな表現をしても「神田直樹」に見えるようにしていきたい。人に見える部分を全部コントロールして作り込むのも無理だしね。
神田直樹ソロアルバム 「カンダナオキ×(かんだなおきかける)」 1 prologue ×ToshiΩ from JARNZΩ 2 いつだってこの世界は ×古村敏比古×川村健司 from TRIPLANE 3 物語が始まる ×コバケン 4 月見草 ×ヨコタユウスケ×長谷川加奈 5 遠い街 ×伊藤幸治 6 Balloon ×蝦名摩守俊 from SE-NO 7 白い花のように piano ver. ×キキミミ 7曲入り ¥1800-(税別) 2014年11月30日 Realease!! 本アルバムを販売するライヴのチケットご予約お申し込みはこちら 東京・三軒茶屋「GrapefruitsMoon」にて開催 東京・三軒茶屋「四軒茶屋」にて開催 関連リンク >>神田直樹 オフィシャルサイト |
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