札幌で活動するロックバンド「OLD」のギターボーカルにしてほぼ全曲の作詞作曲を手がける品川洋氏。
2010年にも一度インタビューしており、その模様はこちらに掲載している。
2014年11月には、10年間OLDのドラムを務めた神田直樹氏が脱退、バンドとしては最小形態の、ベースとギターボーカルというかたちになった今、ソロ活動の意味とは。
品川洋氏との付き合いはゆっくりとしたものながら、今年で約5年になるライヴイベント企画ユニット[d'or]が、定点観測の意味も込めて、彼の文字通りのホームタウン、札幌は琴似にてインタビューしてきた。
 
 


 
 
 
■ソロ弾き語り開始5周年

──前回のインタビューでは「ソロのほうが自由になる」とおっしゃってました。この5年ソロをやってみて、ソロとバンドの差分で何だったんでしょう?

品川  「自由になる」のはやっぱりMC。

──(笑)

品川  間とかブレイクの長さとか、テンポは誰にあわせなくてもいいのでそういう自由さはありますね。
バンドだとやっぱりある程度みんなのイメージする間の平均値みたいのになっていくから。それが黄金のタイミングなのかもしれないんだけど。ひとりだと癖が強く出ちゃうっていうのもあるでしょうね。
それぞれの人間の持っているリズム感ってあるじゃないですか。それが出るなあって思う。

──前のインタビューで、バンドの事務的なこと、ブッキングとかイベント準備とかバンドではやってこなかったから自分でやってみたい、経験する必要があるっておっしゃってましたよ

品川  言ってましたっけ?

──はい。札幌でソロワンマンなんかやるときは自分でやるんじゃないんですか?

品川  いや札幌でもあんまりやってないですよ。会場の人にやってもらっちゃってる。向いてないって思いますよ。疲れちゃう。
でも大野(OLDのリーダーでベースで品川氏の幼稚園からの幼なじみの大野量平氏)とかほんとになんでも事務的なこともやるし、かといって別にベースがおざなりになることもない。人格的にすごく忍耐強くて、精神の芯みたいなのが強い、風邪もあんまりひかないし(笑)だからね、いいんですよね、ああいう人。

■「大野(ベース)がいないとやっていけないんですよ」

──OLDはドラムの神田さんが脱退されましたが、これからもバンドで活動していくイメージですか

品川 そうですよ。大野がやめるって言わない限り(笑)

──今はOLDでもギターはサポートが入っていますし、今後決まってるライヴはドラムもサポートの方になるわけですよね。OLDの枠に入ってもらうじゃないですか、そこで広がることってあります?

品川  それはあるとは思いますけど、正直言っちゃうと曲は80%くらい俺が作っちゃってから細かいところの調整をスタジオでやるってるのであんまり変わらないですね。
(サポートに入ってもらった人の)激しさなり楽しさなり、その人特有のことがわかって、曲のこういう解釈もあるんだって新たにフィードバックすることはありますね。あんまり、他の人とやる欲求はあんまりないですね。
基本的に俺、大野が居ないと不安なんですよね。
だって、なんかこう、音楽以外の人格的な部分で支え合って成り立っている的なところがあって。だから神田くんが居なくても大野が入れば続けられるだろうなあって思って。

──音楽的に絶対的に代替がきかないってことってあんまりないと思うんですよ。音は変わっても音楽は成立する。でもこの人とじゃないとバンドができないっていうのはある

品川  そうなんですよね。音楽っていうよりも、人として(一緒に)生きていきやすいってことだと思うんですよ、根本を考えていくと。
でも個人的には絶対嫌いだけど、バンドやると最高なんだよなあって人もいるでしょうね。それは俺は無理なんじゃないかなあ。

■自分の中の音楽は、バンドサウンドで鳴っている

──ソロではじめた曲でもバンドアレンジを念頭においてやってる感じなんですか?

品川  そうですね。
基本的に歌がこうだったら、副旋律はこういうのだよなあとかあるから。メロディ作ってても。だからコードでじゃかじゃかやるだけだったらメロディが伝わらない。例えばカレーライスを作るためにカレー作ってたんだけど、ただカレールーだけだとカレーのよさが伝わらない。だからそれはドライカレーに作り替えるみたいな。

──ソロの音源を聴いていて思ったのは、ギターが美しくなっているって感じたんですよ。弾き語りだと、一般的には歌いながらコードだけを弾くっていうやり方もあるし、品川さんのソロもすごく音を重ねてライヴをすることも多いですよね。でも今回の音源は、シンプルに一番綺麗なラインをとってきている感じなのかなと

品川  音楽っていくつか要素あるじゃないですか。リズムとハーモニーと旋律と、音触とか。強弱とか。
普段バンドでアレンジして、バンドで1個の曲を作っているけど、ギターでも盛り込めるじゃないですか。バンドでやるよりもシンプルになるけど。元々バンドでアレンジしたものをギターにしてるから、ああいうものになったのかなあと。
コードだけを弾くっていう発想はないですね。

■バンドが変化することで、変わるテクニック

──2011年には、ギターのねぎさん(杉村博樹)が活動休止しましたよね。ギターが抜けたそのときに起こった変化は「ギターが上手くなった」だとお伺いしました

品川  俺そんなにギター好きじゃないんですよ。なんかこう、ほっといてもギター練習しまくってるってやつっているんだよね。暇さえあればうまい人のCD引っ張りだしてきたりするような。そうじゃなくて、ただ、歌のために伴奏できればいいっていう。
で、ああいう状況になって3人になって。3人になってだめだなって言われるのもやだったし、思いたくもなかったんですよね。自分で。それぐらいできんだろっていう根拠のない自信と強がりがあって。ギターが好きだってがんばりたいっていうよりも、バンドの音楽を表現するためにギターがあった。

──それまで4人でやってたことをライヴで3人でやるために変えていったわけですよね。3人になってから作った曲は3人でやることを前提に作っていったんですか?

品川  ねぎさんがいなくなったあとの作品は「美しく内側から包み込む」からだけどオーバーダブはしてギターもう1本入ってるけど、一応計算して、3人でも細かいシンセとかオーバーダブしたギターを抜かしても成り立つようにしましたね。そのためにベースとドラムの音符の数増やしたり。

■ソロアルバムはあなたのために

──今回のレコーディングは?

品川  全部自宅で録りましたよ。機材全部そろえちゃったんで。

──音の調整も全部自分でやってるんですか?

品川  そういうのも楽しくなって来ちゃいました。

──エンジニアリングが楽しくなってきた

品川  アレンジしていると、こういう音色でとかみんなイメージあると思うんですよ、もともとは。でもそのイメージがエンジニアさんとやると完全に再現はできないんですよ。それが外の人とやるよさでもあるけど。
だからなるべく(技術を)知っておいたほうがいいと思って。エンジニアさんとコミュニケーションとれないんですよね、知らないと。で、勉強しようと思って機材そろえてたら、あれ、自分でできるようになっちゃったぞ、と。
やりたいように追求することができました。

──今回の音源は全国流通させるんですか?

品川  させないです。
基本的にOLDを知ってて、僕の声がすきっていう人に向けて作っていて。弾き語りライヴとかやってると弾き語りバージョンのCDないんですか、とかよくきかれてじゃあ作ってみようかなあと思って。

──えっ、じゃあ旧知のお客さんに聴いてほしいっていうことですか?

品川  そうですね。

──おぉ。今回のインタビュー、目的設定の1つにソロアルバムを売るためがあると思ってたんですが…

品川  (笑)

──気を取り直して。音源化すると曲が固まったりして面白いのでは

品川  そうですねえ、ちゃんとしましたね。ここはこうしようって細かいところで。
結局弾き語りですけど、ライヴバージョンとCDバージョンは違うと思っています。クリック聴きながらやってるし。

──OLDの音源として発表されなくて、このアルバムにのみに入っている曲もありますね

品川  「Birthday」はソニー時代に作って、お蔵入りになっていた曲ですね。バンドでレコーディングしてあった曲で。 「I'm always fighting」はバンド向けに作ったけどやってないやつですね。ファンの人がバンドでやってっていってくれたらやるかもしれない。
「Transiensy」はBOOK HOUSE BOYS※※に書き下ろした曲で、ばりばりのテクノだったのを今回ソロに持ってきました。面白い作業です。俺がテクノのアレンジやったわけじゃないんで。逆に正反対に作るとどうなるかなと思ってやってみたら意外と成り立つんだなあって。テクノのほうも聴いてもらえたら面白いとおもうよ。
※編注 もう数曲この音源にしか入っていない曲があります
※※編注 在札幌のトラッックメイカーやデザイナーなどと品川氏で構成されたグループ https://www.youtube.com/watch?v=PpCAdPlHlm8

■色々考えるけど、やっぱり解散しようとは思わない

──ありがとうございます。最後に、みんなが聴きたいんだろうなってことで。聴いてなかったことがあります。音楽は続けるんですよね?

品川  音楽は続けますよ(笑)
こないだ、長期で沖縄に滞在していて。ぼーっと。人生ってなんなんだろうって改めて考え直してて、10代のころに幸せになるために音楽をはじめて、いちばん自分が幸せになるものはなんだろうって音楽をはじめたんですよね。音楽はすきだけど音楽をやるために生きてるわけじゃないからいまいちばんやりたいことはなんだろうて考えたんですよ。
いちばんやりたいことが音楽じゃないなら、ペースを落としたりとか、そういうのもありですよねってあとで大野と話してたんですよ。
結局、自分がいちばんいいペースできるペースって変わってくるとは思うんですよ。
でもやっぱり解散しようとは思わないんですよね。

 
 
 
今、「迷うことを許された」という感じがする。
幼稚園からの幼なじみと、生まれ育った地である程度の規模のワンマンライヴができるオリジナルの音楽を育む。それはとても幸運な姿であると思う。
しかし、ものごとを続けるには、大きくも小さくも悩みながら進むしかない。そこであきらめたり他の場へうつることも可能だ。メンバーのお休みや脱退を経ても、やはり自分の音を表現するためにはバンドが必要という音楽性。
課題を乗り越えるごとに必要なものが明らかになっている。必要なことが分かるれば分かるほど、研ぎすまされた「選択」を迫られる。ソロでもバンドでも、続いていく彼らの活動を応援していきたいと、改めて思うのであった。
(Written by Event producing and creation unit d'or/Staff S/2014.11.22、札幌にて)
 
 
 
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東京・三軒茶屋「GrapefruitsMoon」にて開催
2014/11/29(Sat) PICTURESQUE MUSIC Vol.6

東京・三軒茶屋「四軒茶屋」にて開催
2014/11/30 PICTURESQUE MUSIC 品川洋 SPECIAL LIVE vol.6
 
 
関連リンク
>>OLD オフィシャルサイト
>>品川洋ブログ「『無人島の朝焼け』日記」




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